Summerium & Winterium

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Summerium

冬の間にしか存在しえない、雪と氷の建築物を建てることを考えた。建物そのものは暖かくなると溶けて水になり、消失する。建物を形作る一つ一つの氷塊の中に、「夏」が封じ込められ、保管されている。
「夏」の保管庫のような、小さな倉庫、あるいは博物館を計画する。雪と同化したかまくらのような小さな建物の中に入ると、凍らせた「夏」の標本が内部空間にびっしりと詰まっている。止められた「夏」の時間、それは過ぎ去った季節の残骸でもあり、再び巡り来る季節の予兆でもある。
抗いえない季節の実在とともに、その儚さをも表現するものとして、「Summerium」と名付けられた氷の建築物を提案する。
展示物を内包した氷ブロックを作成し、石造建築物のようにそれらを積み上げて雪原に氷の建築物を建てる。氷の建築物の外観はかまくらのように、雪に埋もれて雪原と同化している。

Winterium

建物内の空間の中に「冬」を監禁することを考えた。建物より一回り小さい立方体を設置し、その中に「冬」を充填し、閉じ込める。そこは「冬」を保管する倉庫であり、また「冬」という季節の一つの標本を展示する展示室でもある。
永遠に続くかと思われた「冬」がいつの間にか消え去って季節が巡り、春が過ぎ去り、そして夏が来た時、この標本化された「冬」は季節の移ろいやすさを映す鏡として、あるいは永い「冬」を象徴する記号として鑑賞者の目前に置かれる。
「Winterium」と名付けた、仄暗く、そして白い「冬」の塊が閉じ込められた空間の提案である。
建物の内部に入ると、白い部屋の四周を巡ってこの部屋に閉じ込められた「冬」の景色を観察することができる。「冬」の部屋には立ち入ることはできず、四周から、あるいは階段を上って少し上から観察するのみであるが、霧の冷気が手の届かない「冬」の気配を伝えてくる。

by fumika morito + shingei katsu.