UBARA BEACHOUSE


UBARA BEACHOUSE 鵜原ビーチハウス
Julian Worrall Spaces + 2.5 architects

site area: 95.13m2
building area: 55.60m2
gross floor area: 98.32m2
number of stories: 2

日本に住むオーストラリア人の兄弟夫妻がその両親や家族とともに余暇を過ごすための別荘として計画された。敷地は成田空港からも近い千葉の外房の地、太平洋に面した海岸沿いにある。敷地眼下に広がる海の眺望を最大に取り入れつつ、家族それぞれが静かに過ごす事のできる空間を計画した。

建築は、過酷な自然環境と対峙する海岸に置かれたキューブが家族を包み込むイメージからスタートした。そのキューブをGLより+約3000浮いた空中に鉄骨と木の混構造の架構として配し、南西方向に大開口を設けることで海の眺望を最大限に生かした。また、水平線の彼方には兄弟夫婦の故郷オーストラリアが位置する。
この海へと開かれたキューブはリビングスペースであり、建築の中心的空間となっている。キューブの周囲へ補助的空間を付加し、多角形とキューブの複合した形態となった。この形態は施主家族、兄ジュリアンと弟ステファンの空間への好みの「複合と対立」を表現しているとも言えるだろう。兄ジュリアンは幾何学的形態への好みと、クロウズ・ネスト的な小空間への好みを表明していた。一方で、弟ステファンは、空間の最大化を常に理想としており、1ミリでも天井を高く、また可能な限り空間を遮る要素を減らすことを要求した。その結果、リビング上部へのロフトや、そこから潜戸を抜けて出る小さなルーフテラス、リビンクに隣接するキッチン、小さな三角形のバルコニー、本棚スペース、そういった小空間がそれぞれの空間性を保ちながらもリビングと連続的に接続する内部空間となった。下階の二つの寝室や、浴室、トイレ等も鉄骨階段のある土間の吹き抜けを介し、上階の大空間と一体化する。小空間を大事にしつつもキューブによって立体的に大きな気積を成立させることで、ミニマムだが窮屈さを感じさせない建築を実現した。
外装は、海からの絶え間ない潮風や砂といった厳しい自然環境への応答として、鵜原の伝統的漁村や海岸部のインフラ設備から着想を得て、焼杉及び亜鉛鍍金処理した鋼材を用い、バナキュラーの現代的実践を目指した。

このプロジェクトで挑戦したこととして、建築を介したコミュニケーションの新しい形態の模索がある。小さな建築が完成するまでに膨大なやり取りが行われ、沢山の人々が関わることは世界中で度々起こっていることだろうし、建築家にとっても珍しいことではない。しかしやり取りの軌跡や感情はその家族にとって一度きりのものであり、建築体験の重要な部分であると言えるのではないか。コミュニケーションのプロセスを通じた建築体験を、どのように記録し、後世に伝達することができるのか。
1つの試みは、和室の寝室に設置した「鵜原ユートピア」と題した障子絵の製作である。「鵜原理想郷」とは敷地付近にある実際の地名だ。都市史学者である兄とアートコレクターである弟の両者に捧げるトリビュートとして製作した、建築表現と芸術表現の混紡としての作品である。すでに一種の職人術と化してしまった手描きによる建築図面表現を用い、敷地環境を緻密なドローイングとして描き出した。竣工時の集落と建築の姿を書き留めた記録でもあるこの障子絵は、昼は外の光によって浮かび上がり、夜は行灯のように灯る。

2020年3月21日 テレビ朝日「渡辺篤史の建もの探訪」放送
https://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/
Design Anthology Asia Edition Issue 24 掲載
https://designanthologymag.com/product/design-anthology-24
architecturephoto.net 掲載
https://architecturephoto.net/90477/

photo by fumika morito.
text by fumika morito + shingei katsu.

Summerium & Winterium

winteriumsummerium
Summerium

冬の間にしか存在しえない、雪と氷の建築物を建てることを考えた。建物そのものは暖かくなると溶けて水になり、消失する。建物を形作る一つ一つの氷塊の中に、「夏」が封じ込められ、保管されている。
「夏」の保管庫のような、小さな倉庫、あるいは博物館を計画する。雪と同化したかまくらのような小さな建物の中に入ると、凍らせた「夏」の標本が内部空間にびっしりと詰まっている。止められた「夏」の時間、それは過ぎ去った季節の残骸でもあり、再び巡り来る季節の予兆でもある。
抗いえない季節の実在とともに、その儚さをも表現するものとして、「Summerium」と名付けられた氷の建築物を提案する。
展示物を内包した氷ブロックを作成し、石造建築物のようにそれらを積み上げて雪原に氷の建築物を建てる。氷の建築物の外観はかまくらのように、雪に埋もれて雪原と同化している。

Winterium

建物内の空間の中に「冬」を監禁することを考えた。建物より一回り小さい立方体を設置し、その中に「冬」を充填し、閉じ込める。そこは「冬」を保管する倉庫であり、また「冬」という季節の一つの標本を展示する展示室でもある。
永遠に続くかと思われた「冬」がいつの間にか消え去って季節が巡り、春が過ぎ去り、そして夏が来た時、この標本化された「冬」は季節の移ろいやすさを映す鏡として、あるいは永い「冬」を象徴する記号として鑑賞者の目前に置かれる。
「Winterium」と名付けた、仄暗く、そして白い「冬」の塊が閉じ込められた空間の提案である。
建物の内部に入ると、白い部屋の四周を巡ってこの部屋に閉じ込められた「冬」の景色を観察することができる。「冬」の部屋には立ち入ることはできず、四周から、あるいは階段を上って少し上から観察するのみであるが、霧の冷気が手の届かない「冬」の気配を伝えてくる。

by fumika morito + shingei katsu.

House of Takamori in Totsukawa Village


高森のいえ(一般向け住宅棟・ふれあい交流センター棟・センター広場・雁木棟)
Architects Atelier Ryo Abe with 2.5 architects

site area: 244.24m2(一般向け住宅棟) 719.66m2(ふれあい交流センター棟) 552.60m2(センター広場・雁木棟)
building area: 147.96m2(一般向け住宅棟) 209.30m2(ふれあい交流センター棟) 79.58m2(センター広場・雁木棟)
gross floor area: 128.07m2(一般向け住宅棟) 191.13m2(ふれあい交流センター棟)
number of story: 1

人口減少と過疎高齢化という問題を解決するために計画された、住宅と高齢者福祉施設の中間的形態を目指した村営施設のうち、一般向け住宅、ふれあい交流センターおよびセンター広場、広場を取り囲む雁木棟を担当した。
ふれあい交流センター棟は高森集落の核として位置づけられたセンター広場に面してわずかに弧を描いた軒下空間をつくりだしている。
集落の日常的な交流や協働、高齢者のショートステイ等にも利用される。
一般向け住宅棟(子育て世帯用)は高齢者の共用スペースを軒下空間にあわせ持ち中庭とセンター広場を結びつける。
集落景観の背景となるような外観を心がけ、詳細部で公と私の空間の違いを表現している。

新建築 2018年2月号掲載
http://www.japan-architect.co.jp/jp/works/index.php?book_cd=101802&pos=7&from=backnumber

photo by fumika morito.
 

Taiwan Tainan Chinatown Park District Planning Competition


台南にある李祖原が設計した巨大商業施設である中国城を取り壊し、広場をつくるという国際コンペ計画案。
跡地を台南の地にふさわしい水と緑とがあふれる広場とすることを目指した。
ガジュマルの樹を中心とした台南特有の樹種を活かし、樹が寄生して自然の日よけとなる事を想定してフレーム状の構造体を広場各所に設け、
また広場地下の空間と地上とが一体となって広場空間を構成するように、サンクンガーデンを設けている。
広場に隣接する中正路・海安路の緑化計画としては、台湾特有の樹種である鳳凰樹等を中心として計画し、
海安路沿いの歩行者エリアにはアクティビティと同時に緑化壁や緑化屋根としても使用できるような屋根や舞台状、壁状の構造体を設けた。

by fumika morito + shingei katsu.

Kozoji New town Vacant House Renovation Competition

kozoji
新しい高蔵寺の住まい方 ―年配者と学生がシェアしあう共同住宅―

高蔵寺ニュータウンでは「エンプティ・ネスト」、子供たちが独立してしまって、もう住んでいない世帯が増えていると知りました。
ニュータウンの高齢化が進んでいく中で、空家やそういった世帯の住宅の空き部屋を活用することが 高蔵寺ニュータウンの再活性化につながるのではないかと考えました。
このリノベーション案は、子供が独立してしまい同居していない夫婦・老人と、近隣の大学に通う大学生とが同居できるシェア住宅へと、空家を改修する計画案です。
シェア住宅に住むメリットは様々ありますが、共有することにより生まれる世代間・住人間の交流が、地域の活性化、住人の生活環境自体にとって、良い影響を与えることを期待しています。
高蔵寺再生のモデルケースとなる、新しい暮らし方を提案する住宅へとリノベーションします。

by fumika morito + shingei katsu.

Isogo renovation


use: housing
address: Yokohama, Kanagawa, Japan
floor area: 66.3m2

20代の若いクライアントから、自宅兼仕事場として中古マンションのリノベーションを依頼していただいた。
場所は、築30年前後のマンションが建ち並ぶ横浜郊外の住宅街。
SOHOとしても使えるように、ミーティングルームと大きな開放的なリビングルームのある間取りにリノベーションした。
あまり料理を作らない施主に合わせて、キッチンの機能は最小限にしているが、コンクリートが浮遊しているかのようなカウンターをデザインした。
写真撮影や映画鑑賞が好きな施主のために、ライティングレールによる照明とし調光できるようにしている。
若い施主の趣味趣向を反映し、彼にとって不足無い機能を備えた住宅となっている。

photo by fumika morito,
text by fumika morito + shingei katsu.

Kenchiku Concour competition “支える建築”

concour
L’architettura Invisibile

目に見えているものがすべてではない。じつは、それを支えているものがあることに多くは気づかない。
コンクリートのブロックが突如出現したかのようなこのスツール群は、実は背景に溶け込むアクリルや、極細のボールチェーンによって実現している。
このスツールは、普段見えない大切なものに気づくための、人と人の架け橋である。

by fumika morito + shingei katsu.

Tamahome Design Competition 2014 “スマートタウンをつくる、これからの家づくり”

Tamahome
物語を描く境界線

タマホームデザインコンペティション2014にて最終8作品に選ばれ、入選した作品。
住民の交流は、集会所や公園の決められた空間の中よりむしろ、壁に沿ってできる内と外の境界の空間に発生するのではないか、と考えた。
茨木スマートタウンに住む誰もが使うことができる様々な機能を内包した壁状のストラクチャーが住宅にからみついた、そんな住宅群を計画した。
壁は住宅の内外の境界であったり、山留のための壁になっていたり、塀になったりしながら、5つの住宅をつないでいる。
この住宅群に住む人とその他の人、あるいはスマートタウンに住む他の住人同士が交流し、使うことのできる様々な機能が、この傾斜地に建つ住宅群をつなぐ壁の所々に配置されている。
壁によってつくられた多種多様な機能を持った境界の空間が、まちに賑わいの輪郭を描く。

by fumika morito + shingei katsu.

Union Competition 2014 “建築緑化”

Union
生き物のための建築

建築の添え物として植物が貼り付いているような建築緑化ではなく、もっと人間の住環境と植物の生育環境とが拮抗しているような建築緑化を考えたいと思った。
建築の構造体自体にポーラス(有孔状)の材料を使い、建築の限られた面にではなくもっと三次元的に植物が入り込めるような人工の土地のような建築を考えた。
人間と植物を受け入れる宿主としての建築の中で、人間と植物とは互いに拮抗しあう関係の中で、それぞれ自己の生存に適した環境をつくって生活する。

by fumika morito + shingei katsu.

Nisshin Competition “Under One Roof”

nisshin
Under One Cloud

大きなひとつの雲のようなルーフを考えた。
いくつもの線材が重なり合って、交差して、集まってつくりだされた、ルーフ が「ある」のと「ない」のとの中間の状態。
濃いところもあれば、薄いところもある。
日の移ろいとともに差し込む光が変化する空間。大気のようなルーフは、人間の活動のための新しい環境をつくりだす。

by fumika morito + shingei katsu.

Lumine Meets Art Award 2014

lumine
宙ぶらりんなワタシ

Lumine Meets Art Award 2014のエレベーター部門に応募し、一次審査通過した作品。
エレベーターという小さな空間、短い時間しか滞在しない空間だけれども、
誰もが最も心が躍るような空間となるようにすることはできないか、と思い、
エレベーターサイズになった小さなサーカスの空間を提案しようと考えた。
エレベーターの扉が開いて中へ入れば、誰もが観客になると同時に、サーカス団の一員にもなってしまう、そんな不思議な箱。
2次元と3次元の合間に生じる、不思議なサーカスの空間をつくることを目指した。

by fumika morito + shingei katsu.